第26話

「朝ご飯食べる?」


「食べる~」




戸惑う私の気持ちは置き去りに、村田はすっかりいつもの村田だ。



何も変わりない。



さっさと服を着て、キッチンの奥に消えていった。




「にゃー」



代わりに村田の猫が来て、珍しく私にゴロゴロと甘える。



無防備に寝転がっちゃって村田に甘えるときのよう。


転がる度に“リンリン”と鈴の音が鳴る。



珍しい。


いつもなら私を見たって知らんぷりするのに。



私から村田の匂いでもするんだろうか。


くっついて寝てたし。




なんてことを考えながら服を着ていたら電話の着信音が鳴った。



私のスマホだ。


しかも着信相手は貴ちゃん。



村田の家にいる時に電話が掛かってくることって今まで何度もあったけど、状況が状況なだけに気まずい。



ちっぽけな罪悪感に包まれる。



しかし、出るか一瞬迷った末に電話に出た。



出なかったら怒るんだもん。


寝てたってヤツは怒る。

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