第31話

「楽しそうだねぇ」


「だろん」


「いつの間にそんな仲良くなったの?」



淑女しゅくじょも秒で口説き落とすモテ御曹司、広報の慶彦よしひこがキラキラオーラを放ちながら興味津々な顔で私たちを見つめる。


机に置いた腕の下には慶彦が作成した今月の生徒会新聞。


内容はごく普通の物で部活についての紹介が書かれてある。




「勘違いすんな。仲良くはない」


「えぇっ?自分達マブダチじゃないんスか?」


「いったいドコをどう見たらそうなるんだ?」


「だってほら、息がピッタリじゃないッスか」


「そう思ってるのはお前だけだ」



友情ごっこをする私を鼻で笑い、澤田君は照れくさそうに頬杖をついてそっぽを向く。


ははーん。さてはツンデレか。


可愛いやつめ。



「仲が上手くいってて何よりだよ」


「だね。ちゃんと勉強も教えてくれているみたいだし」


「これで菜々さんが留年をする心配も無くなりますね」



理央りお鈴花すずか雄大ゆうだいが私たちの隣でのんびりと紅茶をすすりながら、にこやかに笑う。



あ、そっか。と思い出して視線を下に向ければ、机に置かれたノートが寂しげにこちらを見ていた。


早く続きを書いてよ、と言っているみたいに。



そうだった。


今は澤田君に理科の勉強を教えて貰っている最中だった。


すっかり忘れてた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る