第29話

「やる気あんのかテメェ」


「ありません!」


「ありませんじゃねぇっ。出せ‼」



キッパリと言い放った私に鋭い眼光を放ち、澤田君は「せめてこれくらいはやれ」と言って鞄の中から自分のノートを取り出した。


渡されて見てみれば色まで分けて綺麗にわかりやすく纏められている。


参考書みたいに。



「凄いですね。誰から巻き上げたんですか?」


「盗るか!自分で書いたに決まってるだろ」


「えぇっ⁉」



その見た目で?この綺麗なノートを?ちまちま色まで変えてわかりやすく?


そんなバカな。あなた、泣く子もぶん殴る狂暴な不良じゃなかったんですか?と目をカッ開きながら驚く。



人は見掛けによらない、とはよく聞くけども、その言葉が本物だったと初めて知る。




「お前も明日からこうやって書け。話はそれからだ」


「えー。こんな参考書みたいに書けないッスよ」


「このくらい普通だ、普通。つか授業中にペットの絵を描いてる方がおかしいだろ」



明らかに授業中にガムとか噛んで昼寝をしてそうな見た目をして、澤田君は私にお説教をする。


信じられない。


教師も匙を投げるようなバチクソヤンキーなのに。

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