『やる気はありません!』

第27話

「おい、菜々なな。いつまで俺を待たせてんだ」



土日を挟んで月曜日。授業も終わり帰宅する生徒で溢れ返る教室の隅っこ。



廊下で待っていた澤田さわだ君が、私の姿を見つけて不機嫌そうにつかつかと近寄ってきた。



待たしたと言ってもせいぜい5分程度のはず。


しかし、澤田君はえらくご立腹だ。



もしかして俺様って待たされるのが嫌い……?と、疑問が浮かび上がると同時にがっつりと腕を掴まれる。



別のクラスの、しかも大勢の生徒の前だというのに教室の中まで入ってきて大胆な。


思わず「ひぃっ」と声を上げてしまったことは許して頂きたい。



「菜々ちゃん……!」


「あ、ごめん。平気、平気」



クラスメートがギョッとした顔で心配してきたが、片手を上げて宥める。


それでも不安そうな顔をされてしまった。


だが、ビビらせている側の澤田君は平然とした顔だ。



この男、自分が注目度1000パーセントの学校一目立つヤンキーだって自覚がまるでない。


もれなくクラスメート全員の視線を独占しているのにだ。



当たり前のように笑顔で私を教室から連れて行こうとなんかして。


ごく普通の一生徒として振る舞っても周りからすれば違和感がありありなんですよ。



「先生、呼ぼうかっ⁉」


「呼ばなくていいよ」


「でもっ!」


「大丈夫、大丈夫」



今にも職員室に走り出しそうなクラスメートに手を振り、澤田君と生徒会室に向かう。

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