第30話

「お兄ちゃんも大概シスコンを拗らせてましたね」


「な。毎日、呪文みてぇにお前の話を聞かされたし」


「えー」


「だから正直に言えばお前と居ると不思議な感じがする。聞いてたお前と目の前のお前が一致すると余計に」


「同じですか?」


「同じだな。お陰であいつの言ってた言葉の意味が1つ1つ解けてっててる感じがするわ」


「こう言ってたのはこんな理由だった、とか?」


「あぁ。心ん中のもやが晴れてくみてぇにさ」




振り返って先輩を見上げると、先輩は優しく目を細めて私の頭をグシャグシャに撫で回した。



私とお兄ちゃんだけの記憶があるように、先輩とお兄ちゃんだけの記憶も沢山あるんだろうか。



確かにお兄ちゃんが存在したって証拠が、先輩の中に消えずに残ってるのかな。




だとしたら、もっと沢山話を聞きたいな、と思う。


先ずは先輩が言ってた“話”を聞いてからだけど。

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