第29話

そんなの、私だって出来ることなら楽に渡れる人生を歩みたかったよ。


簡単に友達が出来て、平和で楽しくて沢山の人に囲まれて笑う、そんな明るい人生を。



こんな嫌われっぱなしの悪役人生じゃなくって、妹みたいな伊那君みたいな、味方だらけの白く輝いた人生が良かった。



「職場のことだってさ、バカみたいじゃん。バカがミスっただけなのに、まんまと悪役にされてさ」


「まぁ…」


「味方が少ないから直ぐに狙われんだよ。いい加減、敵ばっか作ってないで友達くらい作ったら?」




妹にビシバシ言われて心に苦い気持ちが走る。


分かってるんだけどなー。


そうは言っても上手くいかない。



ほんとにね。


敵を100人作るのは簡単なのに味方を100人作るのは難しい。


世界の人口は何億単位だというのに、私はたった1人の友達を捕まえるのに苦戦してる。



全体の数で見たら100人くらい友達を作るのだって余裕そうなのに。

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