第30話
「今日の詫びを入れてもらうだけよ」
「………す、すみませんでした……。リクエストをお伺いいたします……」
「フルーツタルト」
「なんでそんな面倒なものなの!?」
「詫び入れさせるって言ったでしょ」
「あ、はい…かしこまりました……」
「フルーツタルトに決まった? あたしの分よろしくね?」
「……………お姉ちゃん………」
「ホールで作れば問題ないわよ? それに、ピースにもできるんだから。みんなで食べるには一番いい方法じゃない? やった!」
「待って待って! 夕飯作る時間が……っ!」
「何言ってんの。まだ夕方前なんだから余裕でしょ。奏だって今日はなぜか半休とってたんだから問題ないわよ」
なぜ半休を取っていたのかとものすごく聞きたいけれどそんなこと聞けるわけもないのはわかってます。というか、それならそれで、また材料を買いに行かなければならないのに!
と訴えたところ、「大丈夫、今日は足が二個もあるのよ?」と自信満々に答えたお姉ちゃんに、わたしは何も言えなくなったのは仕方がないことだと思う。
いやでも、草薙さんに迷惑が……! と必死に理由づけをしていたのに、その話題に上がった当の本人が「僕も綾ちゃんが作るお菓子を食べてみたいな」と一言言われてしまえば、私の言えることなんて何もなくて。
そこからは善は急げだー! とお姉ちゃんが私を車に詰め込み、友香ちゃんはなぜか草薙さんの車に乗るわー、とあっさりと草薙さんの車の後部座席に座った。なんでっ!? と思ったけれど、何かを言う前にお姉ちゃんが運転席に乗り込んできて、そのまま発進。
近くのスーパーにて、私たちは材料を買い、ついでに夕飯と思っていると、「タコパしよ!」と言う話になぜかなり、たこ焼きの材料を揃え、そのまま家に帰れると思いきや、お姉ちゃんのスマホに電話がかかってきて運転中だからと私が代わりに出れば友香ちゃんで。
あっちもあっちで運転中のため、草薙さんが友香ちゃんに頼んで電話をしてもらったらしく。
どうしたのかと訊けば、伝言なんだけど、と前置きをしてから「たこ焼きないってさ」と一言。
電話口でお互いに無言になったのは仕方がないことだと思うの……。しょうがないからお姉ちゃんにそのことを伝えたら、じゃあ家電屋にいきましょう! と言うことになり、後からついてきなさいよー! と電話に向かって叫んだお姉ちゃんは本気で家電屋さんにきてしまい、そのままそこでホットプーレトと一緒になっているタイプのたこ焼き機を買い、そのまま帰路についたのだった。
「……………ねぇ、ここまで揃えておいてなんだけど、するのなら休みの日にしない? お願いだから」
「……綾の言葉に賛成です。わたし達も明日大学ありますし、お二人も仕事ありますよね?」
「あたしたちは職業柄休日は出勤なのよ? できるわけないじゃん!」
「まあ、二人のことを考えたら休みの日にって言うのは大いに賛成なんだけどね」
「奏! 裏切り者!!」
「一般論だろ。それよりも、涼香……酒を飲もうとするな……」
「飲まなきゃやってられないことがあったのよー!!」
「友香ちゃんを送るんだろ!?」
「………そうだったわ。ごめんなさい、友香ちゃん。とりあえず、金曜日にまた集まりましょう。仕事は根性で終わらせるわ。奏も根性で終わらせなさい」
そういって、結局その日は解散になったのだった。
…………友香ちゃん、ごめん。
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