第29話

「綾、ブロックするわよ」



 開口一番に、友香ちゃんから辛辣なお言葉をいただきました。



「ごめんなさいっ!」


「やられるってわかってるのになんでやるのよ。寝付けなかったじゃない」


「ごっ、ごめんなさいぃっ!」


「次やったら容赦なくやるから」


「はいっ! それで、謝罪のためにお菓子を作ろうと思ったんだけどハプニングで持ってこられなかった! 明日には用意するのでお待ちください!!」


「……ハプニング?」


「………………」


「黙るな」


「ちょ、と、友香ちゃん怖い……っ」


「被害者だわ、わたしは! で、なにがあったのよ!?」


「……………ど、同棲でよくある、あれなハプニングでございます……」


「は?」


「いや、それよりも前からテンパっててあんなことになっていたんだけど、その後にもっと大きなハプニングがあってさらにテンパってて……どうすればいいのかわからなくて……」


「……もしかして、綾一睡もしてない?」


「…………はい」


「…………はぁ……とりあえず、今日の授業は2コマ目からでしょ? 起こしてあげるから、仮眠とりなさい」


「うぅ、ごめんなさい……」


「謝ってる暇があるのなら寝なさい」



 そう言われて、私は友香ちゃんに引きずられるように救護室に連れて行かれてそのままベットに寝かされた。


 それから、友香ちゃんに管理されつつ、私は授業を受けてお姉ちゃんに授業が終わったと連絡を入れてお迎えを待つ。


 友香ちゃんもそれに付き合ってくれて、一緒に待っていると。



「綾ちゃん」


「………!?」


「あ、涼香も一緒にいるから!」


「…………?」


「綾、お待たせー」


「おっ、おねえちゃーん!!」


「あらー、綾ったら甘えん坊さんねぇー?」



 思わず、ひょこりと現れたお姉ちゃんに思い切りタックルかましながら抱きついたらそんなことを言われた。甘えん坊かな……?


 いや、それよりもこの状況がよくわからないし!



「なっ、なんで草薙さんまでいるの!? 私、今日お姉ちゃんの車に乗るからねっ!?」


「それはそれでいいと思うわよ。けど、もう一回言っとくけど、綾を送るのは奏の家だからね? 忘れてないわよね?」


「うっ、そ、それはそう、なんだけど……っ!」


「あ、そーだ、友香ちゃーん」


「? はい?」


「今日一緒に奏の家にお邪魔しないー?」


「……え」


「そんなあからさまに嫌そうな顔しないの。ちゃんと帰りはあたしがごめん送りますから」


「……わたしが一緒に行く意味は?」


「綾の手作りお菓子がすぐに食べられる」


「伺います」


「即答!? 友香ちゃん即答なの!?」



 思わずツッコミを入れれば、友香ちゃんもばっさりと言い切った。

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