第28話
○
「……綾、何があったのか大体予想はつくけどさ。言っちゃなんだけど、慣れてるでしょう……」
「慣れてるって何!? それは親兄弟のものを見るのと変らないってことが言いたい感じ!? 全然違うよ!? 全然違う!! 恥ずかしさが半端なかったもん!!」
「春翔の時は特に問題なかったじゃない」
「春翔にぃはそれこそお兄ちゃんみたいな感じじゃん!? 見慣れるよ!」
「だから、それと同じだって認識にしてなさいって言ってるのよ?」
「むりだよーっ! 同性同士でも恥ずかしいと思うのに! 友香ちゃんとお風呂とかもむりなのに!」
「…………旅行の楽しみを半減させることを言わないの」
「……うん。ごめんなさい」
ぐるんぐるんと頭の中でいろいろなことが駆け巡っている。
昨日、私が友香ちゃんのために謝罪とともに渡そうと思ってお菓子をら作ろうと廊下に出て遭遇したのは、ほぼ全裸の草薙さんだった。多分……いや、絶対にお風呂上がりだったんだと思う。髪濡れてたし、全体的にしっとりしていた気がするから。……いや、何言ってんの私。変態か。
唯一の救いは草薙さんが腰にタオルを巻いていてくれたことだと本気で思う。うん、大事だよね、そういうのはさ。
例え年下の性的に見ることのできない女の子と半強制同棲をさせられているからと言っても、やっぱり守るべきところは守るべきだよね。うん。
わ、私だって、一応お風呂に入るときには事前に下着などを洗面所に持ち込んでそこで全てをやってるし!
……なんか私自分が何を言いたいのかわからなくなってきた……。
「あーやー」
「はっ!?」
「お、やっと気づいた。今日のお迎えは? あたし来ようか?」
「えっ、でもお姉ちゃん仕事……」
「今日は休みなんだよね。だから動けるわよ」
「ほっ、ほんとに!?」
「本当本当。どうする?」
「お願いしたいです……っ!!」
「はいはい。でも送る場所は奏でのところだからね」
「うっ…………は、はい……」
「……」
お姉ちゃんの一言に再び悶々としながら私は草薙さんにどう接すれば自然に振る舞えるのかを考えていた。そんな私を、お姉ちゃんが盗み見ているのに気づくはずもない。
気づけば大学まで送ってもらえており、私は慌てて車から降りた。
「ありがとう、お姉ちゃん! 授業終わったらまた連絡します!」
「うん、待ってるからねー」
「うん。休みの日にごめんね。お家でゆったり休んでね?」
「そのつもりだから心配しないの。ほら、頑張ってらっしゃい」
「うん! 行ってきます!」
ばたんと車のドアを閉め、少し離れてから振り向き、私はもう一度お姉ちゃんに向かって手を振ったのだった。
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