第27話
ベッドの中に潜り込んで、私は友香ちゃんにこれでもかというほどメッセージを送りつけた。これでブロックされても文句など言えないほどには送りつけた自覚はある。それでも私は自分の中で消化したかった。
春翔にぃへの気持ちは、恋とはまた違うものなんだと、自覚して。それでもやっぱり好きだという気持ちには変わりなくて。けれどそれは、以前のような感情ではなく、弟妹が兄姉に持つようなそんな憧れのような、尊敬のような感情の方が強くなっていた。
ほんの少し残っていた恋情という感情は、すでにズタズタに裂かれ、ボロボロに砕け散っていたので、たぶん、大丈夫なんだと思う。あれから、春翔にぃからの接触もなければ、悠里さんからの連絡などもない。まぁ、悠里さんの場合、私の連絡先を教えていないというのもるけれど。
それでも。
(あそこまで紹介と挨拶をされて、なんの音沙汰もないって、結構薄情なんじゃ……? いや、私の気にしすぎか?)
そんなことを悶々と考えながら、私は友香ちゃんに向かってスタンプテロをしまくる。
………明日、全力で謝ろう。
一緒にお菓子でも持っていけば許してくれるかな……。
そうしようかな。流石にブロックされると悲しい。いや、全力で自業自得なんだけどね。うん。
善は急げだよね! よし、簡単なものしかできないけど、お菓子作ろう! 材料的には本当にクッキーしか作れないんだけども…。
草薙さんに迷惑がかからないようにできるだけ静かにやろうかな。
よし! と意気込んで、私は自分の部屋から出てリビングに行き、キッチンを目指す。
途中で、遭遇した。
「………………」
「………………」
無言になったのは、お互いに驚きすぎて反応ができないからだよね?
「………綾ちゃん、向こう向こっか?」
「………………」
「綾ちゃん、ほんとに、固まってないで向こう向こう? お願いだから。ね?」
「…………」
言われた通り、私はくるっと体を回れ右させて草薙さんに背中を向ける。思考が停止していて何が何だかよくわからないけれども、そんなのは一瞬のことといえば一瞬のことで。
唐突にぶわっと恥ずかしさが込み上げてきて、私は妙な悲鳴を上げてその場から急いで逃げ出したのだった。
「綾ちゃん!?」
後ろから草薙さんが呼んでいるが、そんなことは関係ない。無理、無理だっ!
部屋に戻り、私はスマホを取り出して急いで電話をかける。
「!? 出てくれた! お姉ちゃん!! お願いっ、明日迎えにきて!!」
私のあまりにも必死な叫びに、お姉ちゃんがたじたじになりながらうなずいてくれたのがせめてもの救いである。
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