第26話
自分で自分にため息ををつきつつ、私は部屋着に着替えてから部屋を出てリビングまで行く。リビングに入れば、草薙さんは既に簡単な部屋着に着替えており、ソファーに座っていた。
「……」
そんな後ろ姿を見つめながら、妄想してしまう。
私も、頑張ればあの人の隣に座れるのだろうかと。そんなことを一瞬考えて、私はっとして頭を左右に思い切り振った。何を考えているのかと自分に叱咤し、そのままキッチンに立つ。
冷蔵庫を開けて中身を確認しつつ、正直、そんな凝ったものが作れるわけでもない私は今日もどうしようかと悩んでいた。
(もう、本当。簡単にして食べたい。一人だったらこんな時はカップラーメンでも食べてる。絶対。でも、一人じゃないしなぁ……うーん……)
すでに、野菜を切る煮る焼くなどの動作もめんどくさいと思ってしまっているほどである。
(簡単なもの……簡単なもの……)
考えれば考えるほどカップラーメンしか思い浮かばなくなってきた。
「……サラダうどんとかにしよっかな……」
「いいね、サラダうどん。簡単に作れるし、野菜も取れて一石二鳥だよね」
「そうなんですよ〜、作るのが嫌な時はサラッと済ませられますし」
「そうなんだ?」
「そうなんです。料理が嫌いってわけではないんですけど、メニュー考えるのも大変だし、一人の時はやっぱり手抜きしていくのも大事…………」
「よかったら、今日は僕が作ろうか、綾ちゃん?」
「…………生意気言ってすみませんでしたちゃんと作ります」
「えっ!?」
なにを口走っているんだ私ぃぃぃいいいいいいっ!! むしろもっと早い段階で気付けよ私!! なに普通に会話しているんだ私!! はっ、それよりも冷蔵庫の扉を閉めなければだよ私!!
……いろいろ落ち着け私!!
「綾ちゃん? 疲れているなら僕がやるから、休んでいて大丈夫だよ?」
「そんなまさか休むだなんて。ここにお世話になっているだけも図々しいのにそんな恥知らずなことができるはずがないじゃないですか」
「そ、そこまで重荷に思わなくてもいいんだよ? むしろこっちは無理やり引き摺り込んだようなものなんだから……」
「お姉ちゃんに頼まれたから仕方なくでしょう仕方がないです。同期の頼みは断れないですよね、うん」
「あ、綾ちゃん……落ち着いて……」
無理!!
心の中でそう叫びながら、私はなんとか草薙さんをキッチンから追い出してそのまま料理をした。……ちなみに、夕飯はサラダうどんです。……だって、食べたいって言われたから!!
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