第25話

悶々としながら友香ちゃんとお喋りをしつつお迎えを待っていればスマホが震えて、画面に草薙さんの文字がでる。


 それを友香ちゃんに見せながらメッセージを開いて二人で読み、机の上に広げていたものをゴソゴソと片付けてそのまま並んで草薙さんの車まで歩いていく。



「そういえば、綾」


「何?」


「あんた、今借りてる部屋はどうなってるの?」


「……………………」


「……無言にならないでよ」


「いや、今の無言で察して……」


「十分に察した。何も言わなくていいわ」


「うん、ありがとうございます…」


「綾って、気づくといろんな人に溺愛されてるよね……」


「溺愛ではないよ。でも気にかけてもらってるのは事実だよね。申し訳ない……」


「…………そういうの庇護欲をそそるのかしら」


「え? 何?」


「なんでもないわ。ほら、着いた。じゃ、わたしは帰るから」


「あ、うん。ありがとう、友香ちゃん。また今度、お菓子持っていくね!」


「楽しみしてる」



 そう言って、私は友香ちゃんと分かれて草薙さんの車に借り込む。助手席に座ってベルトを締めれば草薙さんがゆっくりと車を動かし始めた。



「あの、ありがとうございます、草薙さん」


「ん?」


「その、都合のつく時だけでも、こうやって迎えにきていただいているので……朝はただでさえ送っていただいているのに……」


「ああ、気にしないで。むしろやれることをやっておかないと、涼香に負けるからね」


「? そうなんですか? お仕事?」


「……うん、まぁ……気にしなくてもいいよ」


「?」



 そうして、私たちは草薙さんの自宅にたどり着いたのだった。


 貸してもらっている部屋に一歩入って私はいまだに居心地の悪さを感じてしまう。


 机や椅子、ベッド、タンス……いろいろなものを買い揃えてもらってしまい、申し訳なさの方が強くていけない。確かに、お姉ちゃんに領収書を渡しているところは見せてもらったけれども、それでも、私にはそれを払わせようとしないのだという意思表示にも感じて。


 アルバイトも、個人喫茶店でやらせてもらっていて、色々と事情を話したら仕方がないねといって、しばらくの間はお休みをくれた。優しいおばさまである。


 どれもこれも、私自身が自分でなんとかしなければならない問題なのに、人に頼ってばかりだというこの状況がなんだか悔しいとさえ感じてしまう。


 せめてと夕飯などは作らせてもらっているけれど、結局食費だって草薙さんが出してくれている。なんだろう…………役立たずだな、私……。


 その程度のことしかできないって……。


 部屋の中で思わず落ち込んでしまってのは仕方がないことだと思う。

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