第29話

「何…?俺、何かした?」



女の子に叩かれたクゲ君は呆然とした顔で叩かれた頬を押さえてる。



怒ってる2人との温度差は激しい。


向こうが沸騰してるならクゲ君は冷え切ってる。



不思議そうに首を傾げて、あくまでも身に覚えがないと言いたげだ。




「はぁ?ふざけんな!うちらを騙したくせに!!」


「そうだよ。彼女は居ないとか言って嘘ばっかじゃん!」


「いや、マジで居ないし…」



「嘘つくな!同じサークルの子が何人もあんたの彼女だって言ってんだよ」


「ほんと、うちらの周りだけでそれってやばくない?いったい何人いんの⁉」




マイクでも使ったように遠くの方まで声を響かせながら、女の子達は鬼のように叫ぶ。




退きも仲裁も出来ずにとにかく突っ立ってたら、クゲ君に「先に行ってて欲しい」と言われた。



そこはもう逆らわずコクリと頷き、その場を去る。

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