第30話

「……璃、私」


「はい」


「……帝に、あったの」


「………………はい?」


「今日、ね。白雪姫に会いにいらっしゃってて」


「え、ちょ、」


「白雪姫の部屋に、案内したら、よくわからない展開になって……そしたら、……なんでか、気に入られたみたいで………………、あの、私、どうしたらいい?」


「…………」



 璃としては、白紅麗の突然のその告白に何を言えばいいのかわからないのだが、どうやらそれは、白紅麗には伝わらなかったらしい。


 本当に混乱極めている。


 いや、それよりも――。



「帝って言いました、今っ!?」


「え? ええ…………。言ったわ……」


「なんで帝がここに来てるんですか……」


「だから、白雪姫に会いに来ていらしたのよ」


「それで、なんで白紅麗様は気に入られてるんですか」


「……な、なんでかしら、ね……」



 白紅麗のその曖昧な言葉に、璃は顔を覆って深くため息をついた。


 その璃の様子に、白紅麗はおろおろとする。璃は突然がっと白紅麗の肩を掴んで白紅麗を覗き込む。



「……確認なんですが」


「う、うん……」


「その時、誰とも会わなかったですか?」


「え?」


「ですから、白紅麗様と二人きりでしたかと聞いているんです」


「……いえ、違うわ。二人きりではなかったの」


「誰かそばにいたんですか!?」


「そばにいたというか……白雪姫は知っているわ。私があの方を白雪姫の部屋まで案内したし……」


「他には? 誰かに会いましたか?」


「……あに、…………白蓮様に、お会いしたわ……」



 白紅麗の言葉に、璃はぐっと白紅麗に近づく。


 白紅麗は、近づいて来た璃に恥ずかしさを感じながらも、心配に瞳を染める璃を見つめた。



「……大丈夫よ、璃。私は、平気だから」


「それでも、あなたが傷つけられた時にそばにいられなかったことが、とても悔しいですよ、俺は」


「それでも、こうやって私を心配してくれるわ。……それだけで、私は嬉しい」


「白紅麗様……」



 璃は白紅麗の言葉に自身の胸が少し鼓動を早く刻んだことを自覚する。


 思わず白紅麗の体をぎゅっと抱きしめる。心が温かくなる感覚だ。


 無意識に、白紅麗は抱きしめてくれた璃の衣をきゅっと握る。そのかすかな感覚に、璃は驚きで目を見開く。



「……白紅麗、様?」



 思わず困惑した声が出てしまった。けれど、白紅麗はその手の力を緩めない。むしろ、さらにぎゅっと握り込んで、璃から離れようとしない。


 その事実に、璃はさらに混乱する。



「……ね、璃」


「は、はい」


「……私、あなたのこと………………好き、よ」


「……え」



 白紅麗のその言葉を一瞬理解できなくて、璃は思わず間抜けな声が出て来た。

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