第25話
「……その衣は、外さないと?」
「はい」
「こちらがそれを望んだとしても?」
「はい」
「.……こちらの、身分を明かしても?」
「それでも、です」
白紅麗の一貫したその答えに、相手も無理だと悟ったのだろう。ゆっくりと、言葉を吐き出した。
「……分かった。そのままでいいから、案内を頼んでもいいか?」
「はい。こちらです」
白紅麗はそのことにホッとして、先ほど自室に戻る為に歩いていた廊下を、白雪姫の部屋に向かうためにもう一度渡る。
白紅麗の後ろをついてくるその人物はただ黙って白紅麗の後ろを歩く。無言の空間が続いて、少しだけ息苦しくなる。
そんな味わいたくない空気を味わいつつ、白紅麗は小雪の部屋の前までたどり着く。そして、部屋の中に向かって声をかけた。
「…………白雪姫」
「えっ、姉様っ!?」
白雪姫の驚いた声とともにばたばたという音がして、白紅麗は頭を抱えたくなる。お願いだから、もう少し静かに出てきてくれと思ってしまう。怖くて後ろを振り向けない。
そんなことを思っていると、襖がぱしんっ、と開き白雪姫が躍り出てくる。
あろうことか、白雪姫は白紅麗に飛びついてきたのだ。
「っ!?」
「姉様っ!!」
突然の出来事に驚いたものの、白紅麗は落ちないように掴んでいた衣から手を離して、飛びついてきた白雪姫を抱きしめるように支える。
同時に衣が下にしゅ、と落ちてしまう。
内心で悲鳴をあげながら、白紅麗は白雪姫を受け止めていた。
「姉様が一日に二回もきてくださるなんて! なんていい日なのかしら!」
「……白雪姫、私は……」
「そうだ、お茶を持って来させましょう! いっしょにお菓子を食べませんか?」
「白雪姫、話を……」
「姉様が帰ってしまってから来た方とは、ちゃんとお会いしてお話もしました。褒めてください、姉様!」
「……偉いわ、白雪姫。だから、そろそろ……」
「姉様が褒めてくださった……っ! わたくし、とても幸せです!!」
「…………」
ことごとく話を無視されて、白紅麗は少しだけ心が折れる。気がすむまでやらせた方がいいのではないだろうかと思うほど。しかし、後ろには白雪姫に会いにきた人がいるため、それができない。白紅麗はぐっと白雪姫を引き剥がして、少しだけ距離を取る。
「姉様? ……と、後ろの方はどなたですか?」
明らかに、声の高さが変わったのを聞いて、白紅麗はまたも頭を抱えたくなる。しかし、なんとかそれを我慢して、白紅麗は白雪姫に言った。
「……白雪姫に会いにきてくださった方よ」
白紅麗の言葉に、白雪姫は表情をムッとさせる。
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