第28話

(……あの子が人であることが関係しているのか? なんか、少しだけ違和感が……)



 しかし、それが何なのか明確にわからない。もやもやとしたものを感じながら、皇が考えに耽っていると、突然、先ほどの部屋の中に入っていった白雪たちの悲鳴が響いてきた。



「きゃぁああッ!!」


「きゃあッ、……ッ、柚葉ッ!」


「姫様ッ! やめっ、無茶はしないでくださいッ!」


「でも、柚葉ッ!」


「あたしは平気ですから!」



 中からの叫び声に、皇も大和も助けに入るべきか迷っていた。本来ならば鬼はこちらのことに干渉するべきではないからだ。


 けれど。



「――大和ッ!」


「はいッ!」



 二人は同時に動き、茂みから体を出し、部屋に押し入った。



「失礼するッ!」



 皇の律儀な言葉に、大和は少し気が抜けそうになりながらも、部屋の中を見回し、そして目を見開く。



「離して……ッ!」


「柚葉ッ!」



 黒い布で顔を隠した、明らかな不審人物に、皇も大和もはっとしたように相手を見、そして怒りに染まった。



「大和ッ!!」


「はいッ!!」



 瞬間に、皇は白雪の方へ、大和は柚葉の方へと駆けていき、二人に乱暴をしている人物たちを一瞬でねじ伏せる。


 くぐもった声をあげて、地に伏した人物を逃さないように、皇はその背を足で踏みつける。うぐっ、とさらに苦しそうな声が下から聞こえてきた。



「……誇りを、傷つけるようなことをするから、オレたちは人に嫌われるんだぞ」



 地を這うような、そんな声を出しながら、皇は助け出した腕の中の少女に視線を落とした。


 目を瞑って気を失っているようで、動かない。助ける前に意識を奪われたようだ。ちらりと大和の方を見れば、あちらもすでに決着はついていて、助け出した女性も無事のようだ。


 大和に詰め寄っているところを見ると、色々肝が座っているらしい。



「姫様、白雪様はッ!? あたしよりもあの人を助けなさいよ!」


「だ、大丈夫ッ、ちゃんと助けてます!」


「嘘じゃないでしょうね!?」


「本当ッ、本当ですッ!!」


「じゃあ離れなさいッ!! 馴れ馴れしいわよ!」


「た、助けたのに……この扱い……」



 どん、と大和の体を押して柚葉が大和から離れる。明らかにしょんぼりとした大和に目もくれず、柚葉は辺りを見回して、そして白雪を抱きしめるようにしている男と目が合う。


 皇は瞬間的に嫌な予感がし、先に口を開いた。

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