第27話
「人も鬼も、その昔に言葉を解した動物も獣人も。全てが平等の命であり、その優劣を私ごときがつけるのもおかしな話でしょう」
「……つまり、あんたは、全ての命が等しいと? そう思っているのか?」
「少なくとも、私は、ですが。生きている者、生きているモノ。全てが“ここ”に存在しているんです。いがみあってもいいことなどなにもないでしょう」
姿を見せる気配のない相手でも。白雪はきちんと言葉を紡いで応え、答えていく。
ふ、と相手が笑う気配がした。
「成る程。あんたは珍しいな」
「珍しいのではなく、狂っている、と言われます」
「狂っている?」
「ええ。人のくせに、人間として生まれたくせに、そんな風に考えるなど、頭がおかしいと。そう言われます」
「そういう奴ほど、オレたち“鬼”を敵視しているんだろうな」
「そうだと思います」
だろうな、と相手がもう一度同意し、白雪は少しおかしくなってくすりと笑った。
「申し遅れました。私は、白雪と申します」
「そんな簡単に名乗ってもいいのか」
「……どこにいても、囚われの身になるのならば、もう関係ないでしょう」
白雪のどこか諦めたかのような言葉と雰囲気に、身を隠している二人はお互いに顔を見合わせて首を傾げた。
「ならば、オレも名乗るべきだな」
「いりません」
「え……?」
名乗りを上げようとした彼の言葉を即座に切り捨てた白雪に、二人は呆然とする。
それでも、白雪は言葉を続けた。
「私には必要ありません。なので、名乗らないでください」
「……それは、どういう意味だ?」
「言葉以上の意味など、ありません。名乗っていただきたくないだけです」
風が吹く。木々が葉を揺らし、ざわめきのようになる。
相手が、白雪の視界に入ろうと立ち上がりかけた時。
「姫様ッ!? どうして外に……!」
「柚葉。ごめんね。でも、ちょっと外の空気を吸いたかったの。ずっと閉じこもっていたら、体に悪いでしょう?」
廊下を少し慌てた様子でぱたぱたと駆け寄ってくる柚葉を見ながら、白雪は微笑んだ。
「お身体を冷やすのは良くないです。つい先日までは体調を悪くしておられたのですから」
「心配性ね。平気よ。ほら、私は大丈夫だから」
そう言って、白雪は部屋の中へと戻っていく。その後ろを柚葉がついて襖を閉めてしまった。
外で白雪をこっそりと見つめていた二人は、お互いに何を言えばいいのかわからなくなり、黙してしまった。
皇は考える。たしかに、あの少女は自分たち“鬼”が探していた人物かもしれない。言い伝えは残っている“鬼姫)と似た“容姿”であったし、感じ取れる“力”も、自分たち鬼の力とよく似ていた。
けれど――。
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