第24話
「お前が出会った女は、確かに“鬼姫”と同じ“力”を持っているのかもしれない。だが、その子は自分は“人”だと言ったんだろう?」
「……はい」
「ならば、何かしらの
皇の言葉に、大和は首を傾げる。皇は大和を見つめながら言葉を続けた。
「語り継がれている“鬼姫”も、別に完璧なわけではない。彼女はオレ達鬼の治癒能力を著しくあげて、体の回復をしていただけだ。他に干渉するその“力”が、特別と言われているだけで、彼女自身は別に特別でもなんでもない」
「……え?」
「ほら。そうやって勘違いしている奴がオレ達“鬼”の中にも多くいる。どんだけ“鬼姫”を美化させたいんだよってくらいにな」
皇は体にグッと力を入れて立ち上がった。大和も同じように慌てて立ち上がる。
「頭領ッ?」
「とりあえず、一度その子に会いに行ってみる。話をして、確かめてくるさ」
そう言って、皇はくるりと大和に背を向けて、腕を伸ばし、人差し指だけを突き出してそのまま縦に線を引くように滑らせた。“異界”から“
皇は顔だけを大和に向けて言った。
「そういうわけだから、案内を頼んでもいいか?」
「……ッ、は、はい!」
大和が慌てたように返事をし、皇に駆け寄る。二人はそのまま“現世”へと姿を消した。
先ほどの会話を、部屋の外でこっそりと全て聞いていた朱音の存在に、二人は気づかなかった。
――それが、後の後悔につながると、予想できるはずもない。
*
ぱちっ、と目が開いて、白雪は自分が今、どういう状況なのか、理解するのにとても時間がかかった。そして、思い出していくにつれて頭が混乱していった。
(手……な、なんで口づけ……手……ッ!?)
恥ずかしすぎる。どうすればいいのだろう。忘れたい。
(……あの人、私に求婚しに来たっていってた……。と、いうことは、またくるかもしれないということ……?だめだ、冷静でいられる自信がない……)
次からは仮病でも使おうと、彼女としては珍しい結論にたどり着き、心の中で決断をしていた白雪の耳に、聞きなれた声が届いた。
「姫様?」
「……! 柚葉!」
「よかった。目が覚めて! なかなか起きないから心配していました!」
「……うん。えっと、ごめんね。それで、あの……」
もごもごと口ごもってしまうのも仕方がないと言えば仕方がない。柚葉がぴき、と青筋を浮かべたが、幸い白雪に気づかれることはなかった。
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