第27話

「涼の家だ。母さんが涼の家にりんご持ってけって煩かったから」




「りんご?」




肩を竦める裕也君に、祐紀は不思議そうに聞き返す。




「婆ちゃんから届いたらしい。そんなことより、涼。聞いたぞ、お前……」




「裕也君、その話は今度ゆっくり話そう?」




裕也君が言おうとしていることがわかって、俺は咄嗟に言葉を遮った。




ここで言われるわけにはいかない。祐希に心配かけるし……。




それに俺は行かないって決めたから。




「……祐希は知らないのか?」




「うん。言ってない」




首を横に振ったら、裕也君は小さく頷いた。




「……そうか。わかった。おい、祐希帰るぞ」




「あ、うん。バイバイ。涼」




祐希は俺に手を振ると、手招きをする裕也君の傍まで駆け寄って行った。

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