第31話

本当にバカ。バカすぎて鬱陶しいわ。



売り言葉に買い言葉みたいなものだったのに。




悲しそうにする智明が痛ましく思えて、私は智明の頭を撫でた。





別に嫌いなわけじゃない。




智明はバカで、チャラくて、女々しくて、しつこいけど……どちらかと言うと好き。




真っ直ぐで、素直で、一生懸命で放っておけない。




でも……。それは愛とは別物。




言うならば、きっと兄妹愛みたいなものだ。





「ごめん。智明のことは嫌いじゃないよ。だから悲しま……」



「本当に?さっちゃんも俺のことが好きなんだ?」



「……は?」




嬉しそうに抱きついてくる智明に史上最強に苛立ちのボルテージが上がる。




私は智明に罪悪感でいっぱいだったのに。




智明はさっきの悲しそうな顔は演技だったのかと疑いたくなるくらいに、だらしなく口を緩めてる。




おまけに変な勘違いまでして。




ったく!こいつは……!




「ヘラヘラ笑うな。それに私はあんたのことが好きだなんて一言も言ってない!」

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