第30話

「私はあんたなんて大嫌いだ!」




恥ずかしさに苛立って、堪えきれなくて、思わず大声で叫んだ。




ざまー!




なんて思ったけど、直ぐに言ったことを後悔した。




いつも、チャラけた智明が……酷く傷ついた顔をしていて。





「智明……?」




え?なんで?どうして……泣きそうになってるの?



いつも、何を言っても笑ってたくせに。




「どうして……。なにその顔。いつもみたいに笑いなさいよ」




罪悪感に押し潰されそうになるじゃない。




「そりゃーね。傷つくよ。俺、本気でさっちゃんが好きだもん」




『好きだもん』なんて甘えた声を出す智明にイラっとする。




でも、それよりも胸が苦しくなった。




本気でこのバカは私のことが好きなんだ……って改めて実感して。

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