第29話

ここはもうナオに助けて貰うしかない。



ナオの両手に自分の手を重ねてギュッと握り締めた。




「実は今日ね、ケーキ屋さんに行った帰りに路地裏でショウに襲われそうになって……」



「勘違いされそうな言い方すんじゃねぇ!!」



「あ、ごめん。ちょっと違った。力尽くで無理やり押し倒されたの。この膝の傷がそのときの……」



「だから変な言い方すんなっ。普通に突き飛ばされたって言えよ!!」




ショウが苛立った声で叫ぶ。



下の階がバタバタと騒がしくなった。




「何となくわかった。でも、ショウ。とりあえずちょっと落ち着きなよ」



「うるせぇー!ナオは黙ってろ」



「いや、そろそろ……」




ナオが苦笑いを浮かべた瞬間、ドアが凄い音を立てて再び開いた。




「……おい、何やってんだ?俺はカンナに謝りに行けってお前に言ったはずだよな?」



「げっ。オヤジ……」




健オジサンが壁にギリギリと爪を立ててショウを無表情で睨む。

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