第7話

「お願いっ。捨てないで!!私、ショウがいないとダメなのっ!!」




走る車の音に負けないくらい私の声が大通りに盛大に響く。




自転車で歩道を走っていた子供連れの奥様たちや、杖をつきながら歩いていたお婆ちゃんが私をギョッとした顔で見つめてきた。




さすがにショウも驚いたのか、振り向いて目を見開きながら私を凝視してくる。




周囲の驚きは直ぐに憐れみに変わり、お婆ちゃんが『これ、食べて元気をだしてね?』と言いながらイチゴ味のアメを私に握らせてくれた。




「お婆ちゃん……ありがとう」



「いいのよ」




涙目になりながらニコニコと笑うお婆ちゃんにお礼を言って、再びショウがいる曲がり角に視線を向けた。




「てめぇっ!!ふざけんじゃねぇっっ」




今度はショウの怒鳴り声が大通りに響く。




鬼のような形相をしたショウがケーキの箱を抱えて全速力でこっちに向かって走ってきた。




やばいかも……っ。

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