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" 世那がくれた最後のチャンス "
話を聞く時間はいくらでもあったのに。
今、頭の中に浮かんでいる疑問の全てを聞くには十分なくらい、時間はあったはずなのに。
会えなくなってから、気付くなんて。
会えなくなったから、気付くなんて……。
謝りたいと思っても、もう会えない。
もう会えない、だなんて。そんなの……。
「世那は、遼は何も知らないまま、幸せになって欲しいって言ってた。けど、何も知らないままあんたが幸せになるなんて、そんなの絶対に許せない。だから、これは私と瑠衣からの復讐」
「復讐……」
「一生後悔しなよ。何度も何度も世那を傷付けたこと、それを謝らせてもらえないこと。そのチャンスを自分で捨てたこと、死ぬまで後悔しなさいよね」
「……ああ、そうだな」
希美の言葉に、俺は頷くことしかできない。
俺は、きっと……、世那のことを信じられなかったこと、話を聞かったことを、死ぬまで後悔するんだ。
「あと、世那の最期だけど、あんたと仲直りしたいという未練を残すことなく、瑠衣に最後まで愛されて、瑠衣を最後まで愛して。瑠衣の腕の中で眠るようにしてこの世を去ったよ」
希美は、涙を浮かべてそう告げると、俺の前から立ち去った。
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