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 一ヶ月の間、毎日顔を合わせていたのに、どうして世那の身体の調子が悪いことに気付けなかった?


 ……いや、本当は、どこかおかしいって気付いていた。


 大学時代から明らかに痩せていたことも分かっていたし、それを見て、気持ちの悪いお化けみたいだと罵った。



 ほとんど自室に籠っていた世那。家からも出ていない様子だったのは、病気で身体があまり動かなかったのか?


 就職できなかったことを、落ちこぼれだと言ったけど、それは病気だったから?



 それでも毎日しっかりご飯を用意して、家の中を完璧に整えて、俺の帰りを待っていて。


 話をしたいと、話を聞いて欲しいと。


 ただそれだけを願って、毎日待っていてくれたのか……。




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