第32話

ありさの家を出発してから、20分くらいは経っただろうか。

住宅街を抜け、人気がないところへと出た。

閑散とした景色が広がり、流石に不安が見え隠れし始めてきた。


「ありさ、本当にこの辺りなの?」


「一応この辺りであってる筈なんだけどな。

 目印は大きな空き地らしいんだけど…あ、空き地ってあれか!」


それまでよりも些か早歩きで、そちらへ歩くありさの後をついて行く3人。

空き地に着くと、そこには満開に咲いた桜の木が3本佇んでいた。


「ほれみろ、無事に桜に辿り着けたではないかっ!」


「さっきまで不安げな顔をしながら歩いてたくせに。

 よし、さっさとシートを敷いちゃおうぜ。

 梓、悪いけど手伝ってくれるか?」


「あらほらさっさ~」


荷物を地面に置くと、袋から大きめのレジャーシートを広げ、美咲と梓で素早く敷いた。

風で飛ばされぬよう、地面に置いていた荷物をシートの上に置く。


「ぬわ~、歩いたからめっちゃ腹減った…。

 みさきち、弁当箱をオープンナウ!」


「解ったから、みんなの分の紙皿と割り箸を用意しろっての」


今回の花見にあたり、全員分の弁当を担当したのは美咲だった。

おかずはそれぞれからリクエストを聞き、集めたお金でみんなで買い物に行き、食材を美咲に預けた。

大きなタッパーを2つ購入し、それを弁当箱代わりに使う事に。


「美咲は何時に起きて、お弁当の準備をしたの?」


「ん~、5時くらいかな。

 ある程度の下準備は、前の晩に済ませてたから、そんなに大変じゃなかったよ。

 こんなにでかい弁当を作るのは初めてだったから、おかずを詰めるのはちと苦労したけど」


「美咲のお弁当、楽しみだな。

 蓋を開けたら、写真撮ろっと」


大きな紙袋から、大きなタッパーを2つ取り出し、早速蓋を開けると。


「うわ~っ、めっちゃ美味そう!」


1つ目のタッパーには、彩り豊かな散らし寿司が。

2つ目のタッパーには、所狭しと敷き詰められたおかずが。


「一応みんなのリクエストのものは作ってみたよ。

 ん、弁当偏ってなくて良かった。

 よっしゃ、みんな勝手にどんどん皿に取っていってくれい」

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