第30話

気分を変えて、辺りを見回してみる。

行き交う人達の隙間に、風に吹かれてながら花びらを散らす桜が目についた。


そういえば、4人で花見をした事を思い出す。

事の切っ掛けはありさのメッセージからだった。


『皆の衆、あたしはとっても花見がしたいぞ!』


まだ3年生に上がる前の春休みの事だった。

バイトもなく、のんびりとした時間を、美咲の家で過ごしていた。

ソファーで2人並んで座りながら、テレビを見ていたが、震えた携帯に気付き、2人同時にメッセージを確認する。

グループトークに、ありさからのメッセージ。


「…ま~た突拍子もない事を」


呆れ顔を浮かべる美咲を見て、澪はくすりと笑った。


「お花見か。

 最後にやったのはいつだろう」


「私はやった事ないなあ」


携帯をソファーに置くと、テーブルに置かれた煙草に手を伸ばし、1本取り出して火をつけた。

煙が澪にかからないよう、澪のいない方へ煙を吐き出す。

携帯が震える音がする。


『僕、花見ってやった事ない』


「美咲、梓もお花見やった事ないって。

 ねえ、みんなでお花見しようよ」


置いていた携帯を取り、メッセージを確認する。


『よし、私と澪と梓の3人で花見をしようか』


返信をすると、澪はまた笑った。


「美咲はすぐありさに意地悪するんだから」


「日頃の憂さ晴らしは、こういう時にしようと心がけてるんだよ」


美咲の発したメッセージに、すぐに既読が付く。


『ちょっ、なんであたしだけ仲間外れなんだよっ!?』


『おバカだな、ありさ。

 ありさを仲間外れにする筈がないだろう?

 ありさにはとても大切な事をお願いしたいんだ』


『嫌な予感しかしないが聞いてやろう。

 ほれ、言ってごらんなさい』


『場所取り係に推薦したい。

 きっとありさなら、素敵な場所を押さえてくれると信じている。

 場所取りが終わったら、疲れてるだろうし、帰宅してゆっくり体を休ませてくれたまえ。

 あとは私達がありさの分まで、花見を楽しむから』


『それってつまり、1周回ってもあたしは参加出来ないパターンじゃねえか!』

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