第26話

「あ~も~、余計な心配したから疲れちまったじゃねえか」


文句を言いながらも。


「けど、帰ってくんのは明後日かあ。

 暇だなあ」


「帰って来たばっかなんだし、少しは体を休めなさいよ」


「まあ、そうなんだけどさ~。

 あ、一旦家に帰るかな」


ありさと梓が、同じタイミングで反応する。


「家ってどっち?」


「どっちって、私が1人で暮らしてた家だよ」


ありさと梓が、同じタイミングで顔を見合わせる。


「今は澪の家」


「ん?何言ってんだ?」


「澪の家」


「なんだよ、ちゃんと私に解るように説明しろって」


「だ~か~ら、美咲が住んでた家に澪が住んでるんだってばよ!」


澪が私の家に住んでる?


「ま~たそうやって嘘ついて、私をからかうって魂胆か。

 そう何度も同じ手は喰らわんぞ」


「嘘じゃないよ、ダーリン。

 掃除はありさと美月さんに任せたんだよね?

 けど、美月さんは面倒くさがってさ。

 で、澪が独り暮らしを考えてるって話を聞いたみたいで、『勝手も知ってるし、家具も全部あるから澪ちゃん住んじゃえば?』って」


「な、なんじゃそりゃあ!?

 そんな話、初めてお耳に挟んだぞ!?」


「やっぱり美月さんから聞いてなかったんだね。

 そんな訳で、澪は美咲の家に住んでるんだ。

 たまに3人で集まった時も、美咲の家を使わせてもらってた」


そんな事があっただなんて。

2人の思い出がたくさん詰まったあの部屋に、君が住んでいたなんて。

君があの部屋を訪れる事は、ないと思っていたのに。


「まあ、名義はみさきちのままだと思うがな。

 みさきちがあの部屋に行くのは構わないけど、もし万が一澪が早く帰って来たりしたら、澪は度肝を抜かれて驚きすぎてどうにかなっちゃうかもな」


ないとは言いきれない。


「まあ、澪が旅行に行ってる間は、うちで寝泊まりしなさいな。

 あたしは全然構わないし」


「ん~…じゃあ、そうする」


予想もしていなかった展開に、少々頭がついていけてないが。


「ほれほれ、まだ宵の口だぞ。

 酒ならたくさんあるし、腹壊すくらい飲もうぜ~」


ありさの提案に、美咲も梓も頷く。

話が尽きる事はないまま、夜は更けていったのだった。

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