第5話

程無くして、新しい人が入った。

日本人の女の人で、美咲よりも5個年上だった。

ウェイトレスの経験もあり、英語もペラペラだった為、馴染むのにそう時間はかからなかった。


仕事が休みの日には、澪へのプレゼントを求め、街に繰り出したりもして。

欲しいものは決まっていたが、なかなか目ぼしいデザインのものが見つからなかった。


買ったものの、受け取って貰えなかったら…。

そんな考えが頭をよぎりもしたが、軽く頭を振って振り払う。

まだ何もやってもいないのに、マイナスに考えるのはよくない。

確かに、過去の古傷が疼きはするが…。


あの夜の電話から2ヶ月程が経ち、川田から日本に帰っていいとお許しが出た。

プレゼントは漸く納得のいくものを、買う事が出来た。

サイズが合うか、気に入ってもらえるかは解らないけど。


そして、長く伸びた髪も切る事にした。

久し振りに腰の近くまで伸ばしたな。

仕事の時は1つに束ねていた。


髪を伸ばすと、それだけで女性らしく見られるようで、何人かの人から声を掛けられた事もある。

が、興味がなかったから丁重にお断りをした。


仲間内からもアプローチされた事もあったが、付き合う事はなかった。

そういう気持ちにはなれなかったし…。


美容室に行き、長い髪をばっさりと切った。

久し振りに見る、短髪の自分を鏡で眺める。

あの頃の自分を見ているような気持ちになった。


荷造りはあらかた済んでいる。

といっても、大した荷物を持ってきていなかった為、時間がかかる事がなかった。

部屋の掃除も、大分進んでいる。


4月の下旬に差し掛かった頃、漸くチケットを取る事が出来た。

後は自分が日本に行くだけである。


澪は勿論、ありさや梓にも会える。

2人のお土産も用意してある。


日本に帰る事を仲間に伝えたのは、ほんの少し前だった。

引き留められたりもしたが、気持ちが変わる事はなかった。


名残惜しい気持ちもある。

けど、後悔はしたくないから。


自分の気持ちを仲間に伝えると、納得してもらう事が出来た。

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