第32話

「あ、あたし子供じゃないし、心配とか掛けないから!

 てか、掛けてないし!

 心配とかいらないから!

 じゃあ、仕事だから行くね!」


思わず大声を出しちゃった。

これじゃあまるで、『あたしは心配を掛けるような事をしています、心配して下さい』って言ってるようなもんじゃんか。

バカだな、と思っても、言ってしまった言葉は取り消せない。


なにも大声を出す必要なんてなかったのに。

気持ちのせいなのか、足早に家を離れた。


見透かされたように感じたからかな…。

心がモヤモヤするのは何でだろう。




ああ、

気持ちを吐き出す事が出来たら、

きっと凄く楽なんだろうなあ…。




虚しさが追い立ててきて、息苦しさを感じる。

上手く呼吸が出来なくて、急に足を止めた。

言葉に出来ない想いが、頭の中をぐるぐるしてる。


誰でもいい。

あたしを助けて。


欲に溺れてまともさを失い、道を外してしまいそうなあたしを見つけて。

誰でもいい、手を差し伸べてよ。


季節は夏の始め。

燦燦とした太陽が、あたしをじりじりと照らす。


何だか泣き出しそうになったから、流れ落ちそうな涙を必死にせき止める。

堪えて、堪えて、堪えて。





あ~、そっか

あたし、孤独なんだ





気付いたら、ずるっと気持ちが緩んで、努力も虚しく涙が零れた。

折角施したメイクが、ボロボロになっていく。

汗でファンデが落ちていく。

何もかもがボロボロだ。


寄り添ってくれる、誰かが欲しい。

大丈夫だよと言って欲しい。

心からの安心が欲しい。


欲張りと言われても構わない。

誰か、あたしにちょうだい。

ほんの少しでもいいから…。


言い表せられない寂しさ。

独りは悲しい。

頼れる人もいない。




仕事は遅刻だな

少し泣いた後、急に冷静になった。

止めていた足を、動かす。


お金は欲しい。

お金がなければ、生きていけない。


ただがむしゃらに、お金の為に踏ん張らなくちゃ。

そんで、1人暮らしが出来るようにしなきゃ。

就職だって、成功させなきゃ…。


ちぐはぐだな

一丁前な事を言ってるけど、やってる事は何なんだろ。

自嘲しても、意味なんてないのにね。


今日も仕事の後に、また別のパパと逢う。

偽りの自分を演じながら、愛想笑いを浮かべながら。


『自立の為に』と言い聞かせながら…。

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