第31話

金の事しか考えてないんだろ?



そう言われたら、それまでだ。



薄汚い人間に染まっていっているような気がする。

でも、やめられない自分がいて。

欲望に毒されて、頭が相当バグっているんだ…。


虚しさが胸を駆け抜けてく。

あたしは一体、何をしているんだろう。



何の為に生きてるんだろう



あてのない日々。

夢もやりたい事もなく、生存競争の中で流されるだけ。

果たしてそれに、何の意味がるんだろう。



ごちゃついた気持ちを抱えながら、過ぎ行く日々を漂っていた。

そんなある日の事だった。



「最近、羽振りがいいんだな」



久々に森本さんと逢った。

先日パパからいただいた長財布を、バッグにしまってるところを見られた。

そして、服装も。


以前着ていた、安い服じゃないのに気付いたようだった。

一瞬、焦る。


「そ、んな事はないよ」


すんなり言えない自分に、更に焦りを感じた。

パパ活の事がバレたらどうしよう。

瞬時に頭によぎる不安。


「危ない事とかしてないよな?」


確かめるような口調にも取れたし、試すような口調にも取れた。

焦りは不安を濃くするには、もってこいだ。


「してないって。

 別に迷惑とか、掛けてないじゃん」


あくまで普通を装って。

けど、迷惑を掛けてないのは、間違いないと思ったが。



「迷惑は掛けてないけど、心配は掛けてる」



驚きを隠せなかった。

だって、心配をしてる素振りなんて見た事がなかったから。

それに、心配をしていた事にだってびっくりだ。


「心配っつ~か、気になったというか。

 私は保護者とかじゃないから、大きなお世話と言われたらそれまでだけど」


本当に驚いた。

森本さんの口からそんな言葉が出るなんて、少しも思ってなかったからだ。


…もし、森本さんにパパ活の事を打ち明けたら、どうなるんだろう。

怒られるだろうか、呆れられるだろうか。

…いや、見捨てられるかもしれない。

きっと『実家に帰れ』って言われる。


だったら、なおの事言える筈なんてない。

このまま、隠し通さなくちゃ。




ーでも、打ち明けたい自分もいるのは、何でなんだろうー




葛藤。

何で葛藤してるんだろ。


待て待て、今ここで全てを打ち明けちゃったら、お金が確保出来なくなる。

それに、ここで生活が出来なくなる。

やっとあの家を出てこれたのに、また戻るなんてごめんだ。

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