3日目/音を立てる空回り

第27話

就活の難しさを実感した。

世の中は甘くはないし、苦味が嫌なくらいに残るだけだ。


新しい日々に期待と希望を持ち、望んだが外れくじ。

溜め息で曇る朝。

目覚めは最悪だ。


環境の違いに順応出来る程、あたしは器用ではなかった。

元々そこまで器用な方でもないけど。


アラームに起こされ、借り物の布団から出る。

100均で買った鏡が、あたしを映した。


ちょっと前までブリーチで金髪にしてたけど、就活の為にナチュラルブラウンにした。

ただでさえ子供っぽいに、素っぴんだとそれが更に色濃くなるから嫌だった。

すぐに鏡に映った自分から目を反らして、洗面台へと向かう。


顔を洗って、歯を磨いて。

買っておいた、安い惣菜パンを食べてから、部屋で化粧をして。



大人になりきれてないから

大人に見える化粧で

自分を偽る。



慣れない環境。

慣れない土地。

慣れない空気。

自分で思っていたより、やっぱり現実は厳しい。


自分で自分を奮い立たせる。

じゃなきゃ、あっさり倒れてしまいそうだから。


あれもこれも、何もかも全部、自分でやっていかなきゃいけない。

社会たるものを、生活たるものを、キチンと理解出来てないから、何から手をつけたらいいのかも解らなくて。


これだけは言える。

全てに金がついて回る。

何をするにも、金が必要だ。

生きるには、生きてくには、金がなければ何も出来ない。


良さげな会社の面接は、有無を言わぬまま落ちた。

焦って何件か受けたけど、結果は散々で。


僅かな貯金。

使いきるのは、時間の問題だ。


とにかく働かなくては。

コンビニで働いたのだが、店長のセクハラが酷くてすぐに辞めた。

すぐに派遣に登録し、何とか販売員の仕事にこぎつける事が出来た。


出来たからとて、安心は出来なくて。

賃金が東京とは違う。

時給の差が、決定的に違うのだ。


地方の最低賃金と、東京の最低賃金がこんなにも違うなんて。

甘く見すぎていた。

正直、ちゃんとやっていけると思っていた。


給料は週払いにしてもらったのだが、手数料を引かれ、微々たる給料が振り込まれるだけだった。

勿論、貰えないよりはましなのだけど…。


家賃やら光熱費やらを森本さんに渡したら、打撃はデカい。

けど、お世話になってるし、迷惑は掛けたくないし、住まわせてもらってるし…。

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