第8話

ゆっくりと、目蓋を開けた。

携帯のアラームに起こされないのは、何と素敵な事だろうと思う。

休み期間の特権だ。


今は何時だろう。

ベッドの横のサイドテーブルの上にある、置時計に目をやると時刻は10時過ぎを示している。

もう少し寝てようか、それとも起きようか。

悩みながら、視線をぼんやりと天井に移す。


昨日…というか数時間前か。

拾った子はどうしたのか。

まだ寝てるのか、もうとっくに起きて部屋を出て行ったのか。


拾った手前と、トイレに行きたいから、ベッドから体を出した。

まだひんやりとするから、仕事用の椅子に掛けっぱなしの薄い上着を手に取り、素早く着込んだ。


静かに寝室のドアを開けて、リビングの方に顔を向けた。

…どうやらまだ彼女はいるっぽい。

ドアを閉めると、そちらに近付いてみる事にする。


顔を覗いてみると、何ともあどけない…と言うか幼い顔をしながら、彼女は言葉通り『熟睡』していた。

余程疲れていたのか、頬っぺたを指先で軽く突いてみたが、何の反応もない。

こりゃあまだ暫く起きそうにないな。


その場を離れ、洗面台に向かうと水で顔を洗った。

こっちの水道の水は冷たいから、顔に水が触れればシャキッと目が覚める。

頭の方も、大分機能し始めてきたようだ。


台所に向かい、ケトルでお湯を沸かしながら、とりあえずの一服。

朝一から煙草を吸うのは体に大変よろしくないと聞くが、すっかり習慣になってるのもあって、今のところやめる予定はない。

周りから煙草をやめろと言われる事が増えたが、嗜好品を取り上げられるのは嫌だ。


いつも使うマグカップを取り出し、インスタントコーヒーの準備をする。

と、タイミングよくお湯が沸いたので、カップに注ぐ。

煙草を吸って、コーヒーを飲んで。

カフェインとニコチンのコラボレーション。

有害である事に、間違いはないだろう。



テレビを観たいが、テレビはリビングにある為、つけたら彼女は起きてしまうだろうか。

…他人にそこまで気を遣わなくてもいっか。

でも、不機嫌な目覚めから、またギャンギャン騒がれるのも頭が痛い。

寝室の仕事用のPCで、テレビを観るとするか。


吸い終わった煙草の火を決して、灰皿に捨て、部屋に戻ろうとした。


「…うぅ~ん……。

 ほげっ!?」


部屋に戻る前に、彼女が目覚めた。

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