第28話

「てか、寝ないとだぞ。

 寝ないと風邪治らないぞ?」


「…もうちょいしたら寝る」


白石さんや、このままの状態じゃ、新しいビールを取りにいけないんだけどなあ。

でも、機嫌を損ねさせてしまうのもな。


暫くはそのままの体勢が続いた。

白石は相変わらず前を向いたままだ。

手持ちぶさたな私は、ふと白石の髪に触れてみる。


「うわ~、髪の毛めちゃくちゃさらさらだなあ」


指ですくと、さらさらと砂のように指先から零れていく。


「トリートメントとか、ヘアケアしてるん?」


「たまにしてるよ」


触る度にいい香りがする。

何の香りだろう。

シャンプーだろうか?


と、白石が体を動かし、こちらへ顔を向けた。

熱のせいで少し潤んだ瞳が、私を見つめる。

手を伸ばした白石は、私の眼鏡を外すと自分でかけ始めた。


「くらくらする」


「目がいい人がかけたら、そうなるだろうな」


「…似合う?」


「美少女が眼鏡美少女になったよ」


その言葉に、白石が頬を赤くした。


「おりょりょ、白石さん。

 もしかして照れちゃったのかい?」


「べ、別に照れてないしっ」


「はははっ、可愛いなあ」


また白石の頭を撫でてみる。

視線をそらしたのは白石の方だった。

どうやらかなり照れくさいらしい。


「里美も白石の事、可愛いって言ってたよ。

 里美は姉ちゃんはいるけど、下はいないから、余計に可愛く思ってるんじゃないかな。

 一緒にゲームするの、何気に楽しみにしてるしさ」


「そうなんだ。

 先生は妹さん以外に兄弟はいるの?」


「いや、妹だけだよ。

 妹は結婚してて、3才の子供がいるんだ。

 そいつがまた可愛くてなあ。

 白石は兄弟はいないの?」


「あたしはいないよ。

 だから、たまに兄弟がいる人、羨ましく思う時がある」


これは本心だろうな、と思った。

やはり家族の話になると、寂しげな顔を見え隠れさせる。

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