第27話

視線を感じる。

白石がこちらを見ている。


「どした?」


すると、白石は少し考えてから口を開く。


「甘えるって、どうやるの?」


唐突な質問だし、唐突すぎて面食らう。


「いきなりどしたよ?」


甘えるとは?


「山口先生も、先生も甘えろって言うけど、あたしは甘え方を知らないから…」


甘え方を知らない。


「ん~、上手くは言えないけど。

 何だろな、好意に甘えるというか…。

 広げられた腕があったら飛び込むとか?

 ちょっと違うか」


質問をされ、答えるとなると案外難しいものだと思った。

何より、そんな質問を今までされた事がなかったから尚更だ。


「私は妹がいるんだけど、妹が小さい頃はよく私の足と足の間に割って入ってきて、私の胸を背もたれにしてくっついてきたけど。

 そういうのも甘える部類に入るんかなあ」


私の話をじっと聞いている白石は、不思議そうな顔をしている。


「つ~ま~り~…あれだ。

 優しくしてくれたら、素直に受け入れればいいんじゃないんかな。

 深く考えずにさ」


白石の頭を撫でてみる。

と、白石が突然立ち上がると、私の足と足の間に腰を下ろし、胸元に背中を預けてきた。

さっきから色々突然すぎて、頭が上手く処理を出来ていない。


「白石さんや、私は座椅子じゃないんだが」


白石の体は熱のせいもあってか、少し暖かかった。

背を預けたまま、両膝を抱えて座っている。

はて、どうしたもんか。


「…これが、甘える?」


「多分?

 てか、普通は彼氏とかにするもんなんじゃないんか?」


「あたし彼氏いないもん」


「じゃあ、新しい彼氏を作るとかさ」


「…暫くはいらない」


墓穴を掘ってしまった。

この前の出来事を思い出す。

白石の傷を抉ってしまっただろうか。


「ごめん、軽はずみな事を言っちゃったね」


「何で謝るの?」


「いや、ほら、この前あんな事があったばかりだしさ」


「気にしてないよ」


顔は前を向いている為、白石がどんな表情をしているかは解らない。

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