第26話

「里…山口先生、飯は食ったの?」


「涼ちゃん、学校じゃないんだから、いつもの呼び方でいいんじゃない?」


「それもそっか。

 で、飯は食った?」


「牛丼テイクアウトしてきた」


そう言うと、山口先生は手に持っていた袋を先生に見せつける。


「即席の味噌汁でも作ろうか?」


「ありがと~」


山口先生は上着を脱ぐと、あたしの右隣に腰を下ろした。


「先生と山口先生は仲良しなんだね」


「高校の時からの付き合いだからね。

 大学は別だったけど、今の学校に来たらまさかの同じ学校に赴任になったというか」


「じゃあ、付き合い長いんだ」


「そだね~、なんだかんだ長いよ。

 あ、涼ちゃん、あたしもビール飲みたい!」


「飲酒運転になっちゃうから駄目だよ」


味噌汁が入ったお椀をお盆に乗せて戻ってきた。

山口先生は牛丼の蓋を開け、割り箸を割ると、「いただきます」と言って食べ始めた。


「は~っ、やっとご飯だあ」


「何の仕事してたの?」


「書類を片付けたり色々」


あたしの左隣に先生が座る。

あぐらをかきながら、ビールを飲む。


「あ、明日オンラインゲームのイベだ!

 涼ちゃんもやるでしょ?」


「気が向いたらやるかなあ」


暫くすると、山口先生は牛丼をぺろりと食べ終わった。

それに合わせ、先生はお茶を用意して山口先生に渡した。

先生はキッチンに行き、煙草を吸い始める。


「白石ちゃん、ちゃんといっぱい寝て、いっぱいご飯食べるのよ?

 涼ちゃんの事、顎で使うくらいの気持ちでね」


「うおい、私は召し使いじゃないぞ」


「可愛い生徒が頼ってるんだから、ちゃんと応えてあげなさいよ。

 白石ちゃん、いっぱい甘えなさいね。

 よし、じゃああたしは帰るかな」


山口先生は帰る仕度をすると、玄関へと向かう。

と、こちらを振り返る。


「じゃあね、白石ちゃん。

 ゆっくり休んでね」


あたしに手を振ると、ドアを開けて行ってしまった。


「里美はマイペースだなあ」


そんな様子を見ながら、先生が呟く。

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