第6話
春は出逢いの季節だと言うけれど、あたしにはどうでもいいというか。
そう、興味がない。
自分の事は、淡白な人間だと思っている。
桜の雨が降る季節だと言うけれど、あたしにはどうでもいいというか。
世界に色がない。
自分の瞳は、特に見たいものがないのだ。
あたしは白石雪乃。
身長は多分160cmくらい。
体重は…言わないでおく。
部活は帰宅部。
誰もいない家を後にして、学校へと向かってみる。
のらりくらりやってきたけど、3年生になる事が出来た。
案外なるようになるもんだと思った。
「雪ちゃん!」
ぼんやりとしながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。
声だけで解る、希美だ。
「おはよ~!」
「おはよ」
上原希美。
あたしの幼馴染。
背はあたしと同じくらいか。
明るく活発な子で、いつもあたしを気に掛けてくれる。
部活はバレー部。
確か副キャプテンだった筈。
「同じクラスになれるといいね。
去年は別々だったからなあ」
「別々のクラスだったけど、毎日会ってたじゃない」
「そうだけどさ!
やっぱり同じクラスがいいじゃん!」
にこっと笑顔を向けてきた。
小さい頃から変わらない、可愛い笑顔。
並んで歩きながら学校を目指し、貼り出されたクラス表を見てみると、希美と同じクラスだった。
希美はガッツポーズをして喜んでいる。
「やったね、雪ちゃん!
念願叶って同じクラス!」
「はいはい、良かった良かった」
「反応が薄すぎだよ、雪ちゃん!」
教室に着くと、見慣れた顔がちらほらある。
別に親しい仲ではない。
たまに声を掛けられ、軽く話す程度の派手な部類の人達。
「雪ちゃん、今日うちでご飯食べる?」
「ん~、いいや。
出掛けるし」
「…新しく出来た彼氏?」
「彼氏…ねえ。
そんな大層なもんじゃないかな」
一応付き合ってはいる。
派手な部類の人達から紹介され、成り行きで付き合う事になったというか。
好みでもないし、好きという気持ちもない。
じゃあ、何故一緒にいるのか。
自分でもいまいち解らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます