第35話

万年発情期の脳内お花畑な男は、全くもって意味不明なポージングをしている。




「見てみろ真白、お前の彼氏は良い男だろ。」




自分で言うな。


あと、格好付けてる所悪いけど犬の糞を見事に踏み潰してるよあんた。





「……はぁ?」





剣の言葉をしっかり聞き取ったのか、盛大に低い声を落とした人物が、ぱっつん前髪がよく映えているくりくりで大きな目から冷徹な視線を飛ばす。



それにやっと気づいたらしい剣は、真顔で首を振った。





「嗚呼、俺に一目惚れしたのか。悪いな、俺は真白一筋だから他を当たってくれ。」




いやとんだ勘違いだなおい。



あんたどんだけ都合の良い受け取り方してんの、プラス思考にも程があるだろ。





…とは思いつつも、あんだけ遊び歩いていたこの男が私一筋だと迷わず言い切ってくれた事に心は跳ねてしまう。






「なに、あんた真白の彼氏なの?」


「ああ、旦那だ。」


「勝手に捏造するな。」





真顔で頷くなよ。滅茶苦茶嘘つきかよ。私もよく嘘つくけど。





「ていうか、お前誰だ?」




今更ですか。



普通は一番最初に投げるべき質問を漸く投げた剣は、壁から身体を浮かせて首を捻る。



真剣な表情で相手を射る私の彼氏は、とても神妙な面持ちのまま続けて開口した。





「お前…顔は可愛いけどおっぱいねぇな。マイナスAカップだろ。」



何言ってんだこいつ馬鹿か。




あ、馬鹿だったや。





「死ね。」


「痛ぇな!!!急に何しやがんだよ!!!本気で殴っただろお前頭可笑しいな!!!!」





デリカシーが欠如しまくっている男は、見事に美しい人物にぶん殴られた。



頭可笑しいのは昔からずっとあんただよ。

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