第9話
美形と肩を寄せ合いながらのティータイムに、心が興奮と情熱で満ち溢れる。
私今ならこの溢れんばかりのパッションでフラメンコ踊れそうだわ。
「おい。」
そんな私が不意に正面へと視線を投げれば、見事な仏頂面を披露している剣が目に入った。
おいテーブルに座るな。行儀が悪いな。
「ん。」
「な、何。」
絶対機嫌悪いだろって顔をしている相手が、突然手を差し出してきて今世紀最大の困惑に陥る。
その手は何だ????不気味すぎるぞ???
まさか、両脇の美形を俺に寄越せって事か!?!?!?
「手くらい繋げ。」
「え?」
ぶっきらぼうに言い放たれた言葉に、私と剣の視線が絡む。
「せっかく真白と会えてんのにお前に触れられないなんて寂しいんだよ、だから手くらい繋げ。」
「………。」
「嫌か?」
「お願いしますでしょう。」
「何様だよ!!!」
「あんたがね!!!」
手くらい繋げって、何だそれ。キャバクラ通いの親父がよ。
とは思うものの、目の前で唇を尖らせて拗ねている綺麗な顔を見て、内心では可愛いなと感じてしまう。
調子に乗るから絶対に口が裂けても本人には言ってあげないけどね。
「なっ……。」
剣の手をさっと奪った私に、相手が分かりやすく頬を紅く染める。
さっきまでセックスセックス言ってた奴にはまるで見えんな。
「反応が初心者童貞過ぎてウケる。写真撮っておこう。」
「鬼か。」
若干身体を強張らせているようにも見える剣を指差して、腹を抱えて笑っている道梨は微塵も容赦ない。
ていうかBL本の隙間からカメラ向けるのやめて。癖が強すぎだろ。
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