第33話

「あの夢月、生徒会の仕事はもういいの?」




前を歩く彼に質問を投げる。



今更探したところであいつは雑草に埋もれて気絶してるだろうけど。




「うん、平気だよ。だって真白が一緒に帰りたいって言ってくれたのに他に優先する事なんてないよ。」




ぎゅっと、握られた手に力が込められた。


少し冷たい夢月の手。


きっと外でずっと私を探してくれていたのだろう。



彼はそれくらい優しい人だ。




「俺にとっては可愛い真白が一番だよ。」




例えそれが幼馴染としての言葉でも。


兄としての言葉でも。




それでも今はそれで良いから。


彼とこうして手を繋げるのは私だけでありますように。


いつか、彼がお姫様として私の手を握ってくれますように。




「ねぇ、夢月。」


「ん?」


「来てくれてありがとう。」


「ふふっ、どういたしまして。」




愛しい愛しい王子様。



この日私は、久しぶりに王子様と一緒に帰路についたのだった。

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