第32話
私の髪を優しく撫でて微笑む夢月は、やっぱり王子様で。
好きだな。
この人が、大好きだな。そう思った。
「心配かけてごめんなさい。」
「ううん、良いよ。」
「私、どうしても夢月と一緒に帰りたくて…。」
一定の速度で撫でる手が心地良い。
視線を上に向ければ、夢月の唇が降ってきた。
ちゅっ
そして額の上に感じる熱。
「えっ……。」
「帰ろっか。二人で。」
目を見開く私を余所に、平然と手を握って歩き始める王子様。
これは夢ですか?
思いがけないご褒美に、鼻血を吹いてしまいそうだ。
まさかこんなに幸せな展開になってくれるなんて。
鬼帝という肉欲獣は、最低で低能な人間だったけれど、あいつのおかげで夢月に額にキスして貰えたんだから感謝してあげなくもない。
仕方ないから、今まで起こしてきた問題にも目を瞑ってあげよう。
礼の一つくらいは言ってあげても良かったかもしれない。
…もう二度と会う事もないと思うけど。
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