第31話

足元に横たわる綺麗な男。



完全に意識を失っている。


私が意図的に奪ったんだけども。




「ん?今ここから声が…。」



数メートルの距離から聞こえる夢月の声に、私は慌てて鬼帝の身体を引き摺って近くにあった林に捨てた。



それから声のした方へと急ぐ。




「きゃっ。」




体育館裏の角を曲がった瞬間、誰かとぶつかってバランスが大きく崩れる。



地面に倒れるかと思った身体は、寸前の所で優しい温もりに包まれた。





「真白。」




すぐに名前が呼ばれる。


それだけで、キュンと心が締め付けられる。



顔を上げれば、そこには会いたかった王子様の姿があった。



え、やだどうしよう、夢月に抱き締められてる。


最高、生きてて良かった。神様ありがとう。




「真白…良かった、無事だった。何ともない?平気?」




私の頬に触れて、顔を近づける夢月に鼓動が早くなる。


身体が熱くてどうにかなってしまいそう。



「えっと…うん…平気。」


「良かったぁ。」


「あっ…。」




私の返事に安堵した表情を浮かべた夢月が、更に私の身体を引き寄せて強く抱き締めた。


鼓動の音が聞こえてしまわないか不安になる。



まるで夢みたいだ。夢月に抱き締めて貰えるなんて。




「鬼帝を探しに行ったって聞いて、心配した。良かった、何もなくて。」


「夢月…。」




ごめんなさい本当は色々ありました。

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