第35話 快適なはずの空の旅~出張1日目・飛行機の中

プレミアムクラスはさすがに快適だった。





「めったに来れないから満喫しなきゃだね。」

「そうですね」



外を見ると、真っ青な空が目線と同じ位置にあって

とても心地よかった。



「あの・・・」

「聞いてもいいですか?」

「聞いてもいいですか、多くない?(笑)」

「(笑)知りたい事が多すぎて。」

「いいですよ、どうぞ☆」

「では、まず。」

「まず・・(笑)」



質問攻めになりそうな予感。




「指輪、なんでしていないんですか?」

「なんだ、そのこと?」

「答え、もらっていないんで。」

「あ、そうだっけ?」

「はい。」

「特に理由はないのだけど、旦那と仲良くないから。」

「あぁ・・・・ベタですね。」



聞かれたので答えたのに、流されたことに少しカチンと来た。



「・・・・聞かれたので、誠意を持って答えたのですが。」



機嫌が悪くなったのがわかったのか、少し慌てている。


「えと....ごめんなさい、なんか重大な事とかあってなのかな・・

とか色々考えてたので。意外と正統的だなと思いまして。」


「あー。重大な事....ねぇ、んー離婚する決意があるから。とかくらいかな~」

「・・・・・!?」

「え?そんな驚くこと?逆にさ、指輪外してるんだからさ。ベタっていったじゃん、自分。」

「そ、そうですが・・・いや、ちょっと。」

「ちょっと・・・なに?」

「う、嬉しくて。」

「・・・・露骨(笑)」

「す、すいません。でもですね、僕にもチャンスが!と、思って。」

「チャンス?」

「はい、チャンス。不倫しなくていいんだ、と思って。」

「........そっか、そうだよね。私の気持ちが旦那になくても、形式上は、人の妻、だもんね。」

「・・・・はい...。昨日のキスも今日のキスも、不貞をしている事になります。」



「........そうだね、ならそれは良くないからやめよう、そうしよう。」




私は、淡々と言った。

(どんな反応するんだろう.....)



「そ、それは、ダメです。」

「どうして?不貞なんでしょ?迷惑かけたら嫌だからさ。不倫はよくないもんね。」

「・・・・嫌です。」




強いまなざしでこちらを見つめている。


「離婚てさ、すぐ出来ないの。すぐにしないとダメな事とかされている訳じゃないし。

まだ、正式に旦那に話してないから。だから、」

「だから?」

「何かあれば、不貞になるから。二人で会わない方がいいかもね。」



まじまじと見つめて答えた。

(そろそろ、許してあげようかな・・)



「深澤くんが、不貞という言葉を使ったの。

少なくとも私には、流せる言葉じゃない。

深澤くんの口から出たのは寂しかったから、現実に戻っただけよ。」



「待って、ごめんなさい。僕に配慮が足りなかったです。すみません...」




私は、押し黙って窓の方をみた。







深澤くんが口にするのも仕方がない。

本当のことだから。

何かあって巻き込んだら大変な事になるから。

それが現実なのだから。







だけど、気持ちは理性では片づけられない。

それが、宇宙の采配なら尚更。

二人が出会ったことには特別な意味があるはずだから。






「少し、寝てもいいかな?」




そういって目を閉じた。







————————僕は、何を言ってしまったんだろう。

自分の、嫉妬心から結局は蓮伽さんを傷つけた。

蓮伽さんが応えてくれたキスが忘れられなくて、

逸る気持ちを抑えられなくて・・・。

彼女の気持ちを計ろうとした。


こんなに好きになるなんて・・・。

目を閉じた蓮伽さんの顔が愛おしい。

まつ毛、、、長いんだな。




あ、こっちに顔が傾いた。

鼓動の激しさがばれませんように・・・・。






少しだけ、顔を寄せて僕も静かに目を閉じた。

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