第28話

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天正17年3月。






柔らかな風が吹いて目を細める。



 



咲き誇った盛りの桜が、待ち侘びた季節の訪れを告げている。







こんなにも…春を待ち侘びたことなんてなかった。








縁側に出て遠くに見える桜島を見つめた。







幼い頃から見て育った桜島。







もう見納めかしら、と思う。






 


「亀寿様」







桜の花に手を伸ばしかけると、志乃に呼ばれて振り返る。





 



「…無事に、終わった?」







こちらから尋ねると、志乃は頷いた。








「はい。…恙無つつがなく」


    






その言葉に、安堵する。








久保様は婿入になるため、この内城での祝言となる。





その為、久保様は居城である日向の飯野城から昨日到着されたと聞いている。







婿入は先に親子の契を結ぶために、婿入り先の両親と杯を交わす。






つまりは、私の父上と。







そして、父上の養子ということになり…




———————家督を継承することになる。 















「…そろそろ、お支度を」











志乃の言葉に、私はそっと頷いた。

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