第38話
自尊心を噛み殺して、呑み込んだ。
「イかせて……下さい……。」
快楽欲しさに相手に縋り、快楽を乞う。
耳を澄まさなければ拾えない程に声が小さいのは、私に出来る最大限の抵抗と反抗だった。
「ふふっ、やっぱり殺めたいくらい可愛いや。」
興奮と情欲に浮かされた綴の瞳が、宝石みたいに輝いていて。
恨めしく思うくらい、ただただ綺麗だった。
「ぁああんっ……ハァ…ハァ…ハァ…。」
もう寸前まで昂っていた私の躰は、渇望していた激しく強い快感を与えられたと同時に絶頂を迎えてしまった。
嗚呼、何て脆い理性なのだろう。
本能の熱が引いていくのを感じながら、結局は綴を求めてしまった自分を反芻して酷く呆れる。
顔を埋めている相手の胸元で、荒れた息を整える。そんな私の頬を綴は執拗に愛撫した。
同じ洗剤、同じ柔軟剤。もっと云えば同じシャンプー、同じボディソープを使用しているはずなのに。綴からは、私とは違う香りがする。
そういえば、昔からそうだった。綴からは何時も、甘さの中に哀しさを纏った様な香りがする。
哀しさを覚えるはずのないこの男には似合わない香り。そして不思議で奇妙な事は、語からは綴とも私とも違う別の香りがする事だった。
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