第37話

快感に射抜かれた私の口から漏れる、甘くて媚びる様な淫らな声。


それは、綴からの接吻の中へと溶けていった。



顔を覗かせた冷徹さは、もう彼の瞳の中から消えていた。その代わりにたっぷりの欲情が宿っている。




「しーっ、夜ちゃんが声を出し過ぎると語が起きちゃう。」


「でも…ぁっ…んんっ…。」


「下着、お漏らししたみたいになってるよ。」


「だから言わないで。」


「厭だ。」



意地悪。


本当に、意地悪。



クスクスと上品に笑っているけれど、彼の行いは品の良い事からはかけ離れている。



「イキそうなお顔、してるね。」


「…っっ…。」



耳元で、艶やかに彩られた声が吐息と共に囁いた。





「図星でしょ、夜ちゃん。」



私が声を必死に抑えているのを見て、愉しんでいる。


私が絶頂を迎えない程度に刺激を与えて、遊んでいる。




「イキたいなら、お願いしなくちゃあいけないね。」



この男と、この男と同じ貌をした男によって快感を刷り込まれた私の躰。


恥ずかしくて堪らないけれど、この躰は彼の云う通り、理性が消え失せるまでの本能の熱に犯されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る