第36話

自覚してるよ。



だからこそこうして両親に捨てられ、帰る家もなく、綴と語に塵扱いされないかビクビク怯える陰鬱な日々を送っているんだよ。


私だって馬鹿じゃない。自分が二人の愛玩動物だって事くらいちゃんと自覚してるに決まっている。



綴の瞳の奥に眠る冷徹さがこうして不意に前へ出て来た時、恐怖に震える自分に気づいて嘲ってしまいそうになる。




「厭な気分にさせてごめん。」


「夜ちゃんが分かってくれたなら良いんだよ。」



飼い慣らされて、彼等に服従している私は愚かだ。


愚かな、奴隷だ。



だってほら、綴の表情が和らいだ途端こうして安堵の息を無意識に漏らしてる。


頬を撫でる彼の手に、自ら擦り寄っている。



こんなの、飼い主のご機嫌取りをする犬と何ら変わらない。




「僕ね、偶に夜ちゃんを無性に殺めたくなる衝動に駆られるの。」



私の飼い主は狂気に冒されている。


見えない首環で二四時間、三六五日、私を繋いでも尚、彼は途方もない不安に襲われるらしい。



「殺めて夜ちゃんの心臓を抱き締めて眠るの。そうすれば夜ちゃんが僕だけの物だっていう確証を得られるから、初めて安心できそうなの。」


「っ……。」



ぐちょぐちょに濡れた下着の上から、彼の指が熱を孕んだ私の内部へと挿入された。

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