第6話

今思い返してみても、私は幼い時からずっと何に対しても関心や興味や好奇心と云った類の物が、他人のそれと比べると圧倒的に欠落していたんだと思う。


母親が奇妙がって案じていたのも、私の性格に関しての事ばかりだった。



何が云いたいのか。つまり私は、二人の少年に対して何の感情も抱かなかったのだ。



「話、長いよ。綴君。」



父親が語だと紹介した少年を見て、私は不服を申し立てた。



「貴方もだよ。語君。」



次に父親が綴だと紹介した少年を見て、私は顔を顰めた。


二人がほぼ同時に目を丸くした。



貌だけじゃなくて、表情まで同じなんだ。そんな事を思いながら服装も背格好も同じ美少年達にそっと歩み寄る。



「置いてけぼりにするのは良いけど、早く私をこの部屋から出して。帰りたい。」



自らの意思を述べた私に、クスクスと笑い声が返って来る。




「何云っているの?僕が語でこっちが綴だよ。君のお父さんがそう紹介してたでしょう?」


「ううん、私は貴方が綴でそっちが語だと思う。」


「どうして?」


「何となく。お父さんが紹介していた時から、少し様子が変だった。いつもそうやって入れ替る遊びでもしてるの?」




何時になったら帰る事ができるのかな。


欠伸を零した私の頭を埋め尽くすのは、それだけだった。

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