第30話

「……さっき、何か言ってた?ごめん、テレビ見てたから気付かなくて」



「あぁ、別に…また後で話す」




疲れた、っと言って私に背を向けてリビングへと戻っていく颯斗はやはり、どことなく不機嫌。もしかしたら何度か私に声を掛けてくれたのかもしれない。




美雪に言われた”浮気疑惑”がどうしても頭から離れなくて、一人になるとつい考え込んでしまう。




これじゃあイメチェンなんて披露する前に、颯斗とのすれ違いが生じて更なる関係性悪化に繋がりかねない。




─…何とか、名誉挽回しなくては




「お腹空いてるよね?夕飯、今日はチキン南蛮にしたんだけど…これが結構いい感じに出来て、」



「─…菜々。悪いけど俺、今から出掛ける」




耳を疑うようなその発言に、思わず手を止めて颯斗の顔をジッと見据えてしまう。

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