3
「クールな見た目してるのに、どこか物憂げ」
「………」
「河原先生、悩み事ですか?」
「
英語教師の
女性の年齢を言うのはあまり宜しくないが、彼女は38歳の独身。
溝本先生の席は、俺の隣だ。
「悩み事なんて、そんな大層なことじゃない。考え事程度」
「考え事だって、立派な悩み事ですよ」
猫でも撫でるかのような声でそう呟き、椅子に座り長い髪の毛を掻き上げた。
俺よりも年下なのに、年上かと思わせるくらい余裕に満ちている。
「考え事でも、悩み事でも。どれだけ頭を使っても答えなんて出ないけどな」
ふぅ……とまた溜息が出ると同時に、何故か脳内に浮かぶ平澤の姿。それにまた、頭を悩ませる。
「……河原先生。そういう時は、スッキリさせた方が良いですよ」
「…………」
艶っぽい声色で。
そう、耳打ちした溝本先生。
これは溝本先生流、ホテルへのお誘いだ。
「………じゃあ、21時。いつもの場所」
少しだけ考えた後、俺も小さく溝本先生に耳打ちをする。
「はい、楽しみにしています」
そう言って微笑んだ溝本先生は、更なる色気に満ちていた。
今回で、4回目のお誘い。
だが別に、恋愛感情は無い。
俺と溝本先生、お互いに利害が一致しているだけ。
ただそれだけの関係。
嬉しそうな溝本先生が自分のデスクと向き合った後、何だか笑いが込み上げてきた。
自分で自分に笑えてくる。
俺は別に愛情なんて無くても、いとも簡単に女を抱くことができる人間なのだから。
俺のことを好きだと言ってくれる平澤には悪いけれど。
やっぱり俺は、どうしようもないクズだ。
(side 河原 終)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます